編み物を極めてくると、自分の気に入った色に毛糸を染めたくなります。
手芸店には染色用材料が多く売られていて多くは合成の染料です。
手軽に発色の良い色での染色が出来ますが、
より手間のかかる天然素材で染めたくなってしまうのが不思議です。
そもそも、「手間うんぬん」を言い出すなら、
「セーターは既製品を買えばいい」ということになるので、
編み物をする人は手間の話をしてはいけないんです。
手間を楽しみたいんですよね。
藍や紅花など、天然の色素は数々ありますが、
入手が難しい場合や、取り扱いが簡単でない事が多いです。
今回は初級編ということで、
誰にでも必ず手に入れる事の出来る手軽な材料「紅茶」を例に
染色の基礎的な方法について確認していきます。
紅茶染めの方法
天然素材で材料を染める場合、一番簡単なのは紅茶染めです。
紅茶染め…繊細で上品な雰囲気で聞こえも良くて素敵な印象です。
ところが、これがコチーニルだったら大変です。
コチーニルとはジュースやお菓子の中に普通に入っている赤系の天然色素ですが、
カイガラムシという虫から抽出した成分なので、
それを知られると「虫で染色したなんて気持ち悪い!」と
眉をひそめられる可能性が高いです。
紅茶なら万人受け間違いなしですし、材料はスーパーやコンビニで簡単に手に入ります。
でも、手間をかけたくなるのが私たちなんですよね。
手間をかければかけるほど愛おしいので
「最初から染まった物を買えばいいのに」と家族に言われても
聞こえなかったことにしておきましょう。
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用意する材料と道具
・ティーバッグ
・染める素材(綿、ウール等)
・水
・塩、酢、ミョウバン等、お好みの媒染剤
・鍋
・耐熱のボウルなど
紅茶のティーバッグは
250mlに対して1個使うと覚えておきましょう。
素材の重さの50倍の水に染料を煮出します。
素材が20gなら水は1000ml、ティーバッグは4つです。
色素を定着させる媒染液として、ミョウバンや食塩を
水1Lに対して大さじ1杯程度入れればいいですよ。
最初は難しく考えなくても
染めたい素材が十分浸かる量の染色液が出るように作ってみましょう。
染める前の下準備
素材の量や質により、染まりやすいもの、染まりにくいものがあります。
糸でも原毛の状態でもどちらでも染まります。
しっかり染まっていてほしいなら原毛で染めたほうがいいですが、
ばらつくので手間はかかります。網などを利用し素材の流出防止が必要になります。
糸になり、輪の状態になっているもののほうが扱いは楽です。
ただ、双糸になっている場合、表面は色がついたけれども、中まで染まっていなかったという事もあります。色むらをニュアンスとして楽しむのもいいですし、どうしてもむらなく染めたい場合には、染色の段階で均等に染め液が染み込むように、素材を動かして繊維の中の水分が、染色液に置き換わるように手間をかけます。
染めた後の色を落ちなくするために、媒染剤というものを使います。
媒染剤には種類がいくつかあります。(後で書きます)
また、天然色素の場合には、日光による退色があります。
市販されている服も、日向に置いておくと紫外線で色があせてしまうことがありますが、天然素材の場合には、それが顕著なものもあります。
徐々にかわりゆく経年変化を愛でて楽しみましょう。
紅茶染めの染色方法
- 毛糸や原毛、または布をむらなく染めるために、水で濡らしておきます。
糊や脂分、汚れがついている場合には、よく洗い流しておきましょう。色が染まりにくくなります。よく脱水しておきます。 - 鍋に水とティーバッグを入れて煮出します。沸騰してから弱火で10分程度煮出しましょう。
少し冷ましてからティーバッグを取り出します。 - 水で濡らし、よく絞った素材を70-90℃程度の染色液に浸します。
この際素材の水分量が多いと、染色液が薄まります。
むらにならないように、素材の水分が染色液に置き換わるように混ぜましょう。
火傷しない程度に温度が下がってきたら、手で優しくもみこむのもいいです。 - 繊維の中に色が浸透するまで漬けますが、グラデーションを楽しみたい場合には、段階的に引き上げる等の工夫をします。
あるいは、一度薄く色がついたものを、好みの濃さに染まるまで、繰り返し染めていきます。 - 最後に水洗いします。色が少し落ちますので、多少濃いめに染めたほうがいいです。
素材から色が出なくなるまでよく水洗いをし、脱水してから陰干しして乾燥させます。
水洗いが甘いと、服などに仕上げた後に、下着に色移りしたり、洗濯機にかけたら他の素材を汚してしまったということになります。
紅茶の場合には「全ての洗濯物が青く染まった!」というような致命的な事は起きないと思いますが、普段から心がけておくことで、色の濃い染料を使う際にも失敗が起きにくくなります。
乾燥する前にはよく脱水して早く乾燥するようにしておきましょう。
乾くまでに時間がかかると色がまだらになる事があります。
洗濯機で脱水するのもいいでしょう。原毛の場合には、ネットに入れたり、タオルに挟むなど工夫します。
紅茶染めの場合には、最初から濃すぎる色がついて失敗することはありませんが、素材の水分が多すぎて色が薄まってしまう事はあります。
趣味でバリエーションを楽しむ場合ならば、ラフに楽しんで頂ければいいですが、均一な物を揃える必要がある場合には、お菓子を作る時のように素材の重量を測ったり、使用した紅茶の銘柄や、漬ける時間、染色液の温度のデータをとっておくといいでしょう。
素材の種類や紅茶の銘柄、使う媒染剤によっても染まる色が変わります。
場合によっては、使用する水や煮出す鍋の素材(鉄・アルミ等)が媒染剤の効果を発揮してしまい、同じようにやっているのに違う色になることもあります。
同じ「紅茶」を使っているのに、淡い茶色に染まる事もあれば、濃い茶色に染まることもあります。それが毎回の出会いで楽しいところでもあります。
是非、自分の生み出す色を楽しんで下さいね!
ティーバッグを使った紅茶染めは、後片付けも簡単で、においもなく、お料理の延長のように気軽に楽しめる初心者向きの染色方法です。紡ぐ糸だけでなく、ちょっと汚れてしまったハンカチやブラウス、少しだけ残った端レースを染めても素敵です。染めた後の少しだけ残った紅茶を紙に塗ると、アンティーク風の色味が出ますよ。
英字新聞に雰囲気が欲しい時にもおすすめです。
でも、だんだん私たちは手軽であることに物足りなくなってきます!
コーヒーでも染まるかな?梅干しの中の赤いシソで色が染まるかも!?と思いはじめたら
染色の世界にようこそ!ということになります!
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